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Day.27-2002.08.09 Day.26 へもどる
 いつもと同じように朝を迎えた私達の鼻腔を、いい香りが刺激した。香りの元をたどると、何とベヴンがベーコンエッグを焼いてくれている。今までのツアーでは見られなかった光景だ。朝ごはんはシリアルとパン、コーヒー・紅茶しか選択肢がないと思っていた私達は、本当に驚いた。16人もいるツアーだ。毎朝ベヴンにスワッグを揺さぶられて起きると、キャンプファイヤーの火は焚かれているし、お湯も沸いている。これに加えて参加者全員にベーコンエッグを作ろうと思ったら、ベヴンは一体何時に起きて準備するのだろう?

 住んでいるゴールドコーストという土地柄のせいか、はたまた私達が機会に恵まれないだけか、仕事熱心なオーストラリア人にあまり会った事がない。(別にケンカを売るつもりは全くないけれど、“自分は仕事人間だ”という人は結構いる)仕事人間とまで言わなくても、納期を守らないし、“折り返し電話します”は電話がかかってきたら奇跡、自分のミスであっても“I'm sorry”という言葉を聞いたためしはないし、最後の切り札に“あなたの英語は理解できない”と言い捨てるなど、自分の仕事に責任を持つ人に会うことは、残念ながらあまり多くない。保正家は今までのツアーで、担当ガイドさんを含め同宿になったガイドさん等様々なガイドさんを見てきた。そして、早い時間から飲みに出かけてしまったり、参加者を待たせてまで自分の楽しみを優先したりという人に会うことも多かった。

 今までのガイドさんたちとはちょっと違うベヴンに、私達は既に感動していた。

 そしてキヨ君は、新たな出会いに胸をときめかせていた。

 ツアー参加者に、イングランドからやって来た2人組の女の子がいた。2人とも20歳、そしてかわいい。一人は活発でキュートな女の子。もう1人はちょっと恥ずかしがり屋さんの美人。そしてキヨ君がググっと惹かれそうなのが、後者の女の子“ハナ”ちゃんだった。

 確かにハナちゃんはかわいい。きれいな上に優しいのだ。そしてハナちゃんと友達のクレアが英語のスラングを私達に教えてくれて、私達は簡単な日本語を彼女達に教えてあげたのだが、外国の人が覚えたてのつたない日本語を話すと、これがとてつもなくかわいいのだ。これは日本人が英語を話す場合にも当てはまり、こちらが真剣に怒って話をしても、“あなたってキュートね”と言われて話が終わってしまうことはよくある。

 失恋進行中のキヨ君、ハナちゃんの全てに参ってしまったらしい。
 今まで“もう、俺サーファーズへ帰るわ”と言っていた事を忘れてしまったかのように、口を開けば“ハナちゃんってかわいいなぁ”である。やっかいといえばやっかいだが、元気がないよりもあるに越したことはないので、保正家はキヨ君の恋?を温かく見守ることにした。

自然の調和が美しいバーネット渓谷

 この日、それぞれに素敵な朝を迎えた私達には、2kmのウォーキングが待ち受けていた。向かったのは“バーネット渓谷(Barnet Gorge)。渓谷と遊泳は常にセットであることがわかったので、みんな歩いた後の遊泳を楽しみに、思いっきり汗をかいてみたりする。それにしても体格の違いは歴然で、私達日本人と他国の参加者の歩幅が違うこと。。。同じ地点から同じように歩き始めたはずでも、2km先では数百メートルの差が。

ウォーキングの途中で見つけたアボリジニアート


 今日の遊泳は、泳ぐと同時にある重要な意味も持ち合わせていた。そう、“お風呂”である。もちろん川で石鹸やタオルを使って体を洗う人はいないが、何となく流れに体を任せたり、意味もなく体をさすったりしてしまう。何と言っても今日もブッシュキャンプなのだ。汗を流せるチャンスはとても貴重なのだった。

岩の上でちょっと休憩


 お夕飯は魚のソテーとヌードル。オーストラリアでは一般のスーパーマーケットでも、各国の麺が売られている。シンガポール・ヌードルや福建ヌードル、そして“UDON NOODLE”と書かれたうどん等。他国の麺についてはよくわからないが、うどんに関して言うと、麺売り場の前で“これ、うどん?本気で?”と1人で突っ込みを入れてしまうことも、結構あったりする・・・。


 この日使われたのは“福建ヌードル”。この麺と野菜を炒めた、焼きそば風とでもいおうか。準備をしている時、菜津子はベヴンに“野菜を切って”と頼まれた。“どんな感じに?”と聞いた彼女に、ベヴンは“nice and small(程よく小さくね)”と言い、菜津子は彼女的に“小さく”切ってみた。
 菜津子の切った野菜を見たベヴン、“nice and smallだよ・・・”とつぶやく。

 そう、菜津子は“具の大きい”家庭で育ったのだった。人から言われて気付いたが、彼女の家で作られるお料理は、比較的具が大きい。ここで母の名誉のために一言添えると、菜津子の母の作る料理はとてもおいしい。初めて家を出て一人暮らしをした学生の頃、友人とお味噌汁を作った。その時、彼女の切った具を見た友人達は口をそろえて“お味噌汁の具って、、、もう少し小さいんじゃない?”と言ったものだ。
 菜津子にとっては“nice and small”な具はあの優しいベヴンに却下されたが、この日の夕食も楽しく過ぎていった。

キンバリーの夕日は今日も雄大に沈んでいく


 キャンプツアーも3日目となると、それぞれに疲れも出てくるものだ。夕食が済むや否や、早々にスワッグに潜り込む人も増えてきた。そんな中、“恋する京男 キヨ君”はキャンプファイアーの傍らで、のんびりと一服中。そしてその横には、一心不乱に紙を巻いている男性が。。。

 彼の名前はブライアン。アイルランドからの参加者だ。実は彼とはこの次のツアーまで一緒に行動することになったのだが、この彼、とってもいい人なのだ。日が経つにつれ自分勝手さを発揮する人の中にあって、常に進んで人を思いやり、手伝う。“この状況でどうして?”と聞くと、“僕はただ、人の役に立ちたいんだ”とさわやかに言う。
 私達の英語がもっと上達していて、なおかつ彼のアイルランドアクセントを理解できたなら、もっともっとわかりあえたのかも知れない。

 そのブライアン、どうやら“紙巻タバコ”に初挑戦しているらしい。
 オーストラリアは、タバコがとてつもなく高い。1カートン約9ドル、日本円で600円以上(2002年当時。2006年の今は800円位)である。その高いタバコを買わずに済む方法。100gの葉っぱとフィルターと紙を買う。締めて20ドル位だが、かなり安く上がるのは事実だ。日本人、特にワーキングホリデーの身にはこの巻きタバコの存在はありがたく、キヨ君も巻きタバコセットを持参していた。

 キヨ君がタバコを巻く姿を見ていたブライアン、自分もやってみたくなったらしい。キヨ君に1個分のセットをもらい挑戦した。しかし、タバコを手で巻くのは至難の業。ブライアンが巻いている紙は、ななめにくっついてしまった。
 するとブライアン、その紙をキャンプファイヤーの火に投げ入れ、キヨ君の紙をもう一枚。そしてもう一枚。・・・

 紙は50枚入りで1ドル程だと言っても、次にいつ買えるかわからない、貴重な紙である。相手がいい人だけに、“だめ”とはいえないキヨ君。。。
この日以来、ブライアンは毎夜キヨ君の隣に腰を下ろし、熱心に巻きタバコの練習をすることになったのであった。。。

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